あさひ会計セミナー棟

長辺を妻面として、二つの切妻屋根が重なった形状をもつ2階建のオフィスである。1階はオフィスやラウンジ、2階はほぼ一室の無柱空間となる大会議室とし講演会なども行えることを想定している。



【構造概要】
大会議室の屋根スパンは12mあり、耐震要素も外周のみとする必要があったため、主構造は鉄骨ブレース構造とすることとした。しかし、増築となる本建物に併設する既存棟が木質ファサードであったことから、本建物も木質ファサードとし、室内空間においても木質の仕上げと構造を兼ねた要素の採用が望まれた。


ファサードは全面ガラス貼りとして,日射・視線の制御を兼ねたスギ製材の水平ルーバーを配置した。構造はガラスの支持に必要な方立が2~3m内外に必要となることと反対側に配置したブレースとの剛性バランスを考慮し、約6°の角度をつけた斜め柱を並べている。これにより長期荷重支持とともに偏心ブレースとして地震力に対する水平剛性を確保しつつ、ファサードのルーバー支持材としても機能することができる。また、これら斜め柱で支持された木ルーバー自体もガラス方立の風圧力支持を担っており、日射・視線の制御を行いつつ構造的にも鉄木の小断面が入り混じって風圧を分散支持している。

架構の構成

屋根架構は天井仕上げを兼ねて、LVLを組み立てた工場製作のパネル部材であるストレストスキンパネル(以下、SSP)を採用することとした。
SSPは通常、水平面となる上下フランジ板とピッチの鉛直リブとなるウェブ板からなる箱型断面より構成されるが、今回は天井にウェブ板を現しとするため、下フランジのないT型断面を採用した。これにより、屋根荷重を支持しながら天井は仕上げなしで木質の仕上げとすることが可能となり、かつ軽量な屋根架構とすることができた。

            ストレススキンパネル                          ストレススキンパネル現しの天井  





屋根のSSPはLVL工場にてLVL単材を切断したのち、フランジ材とウェブ材をビスにて接合して製作された。製作可能寸法は最大幅約1.8m、長さ12mまでであり、今回は最大で幅1.8m、長さ7.2mのパネルを使用した。工場製作して現場搬入したSSPを鉄骨架構が上棟後にクレーンにて吊り込み所定の位置に固定した。室内に現しとなる鉄骨梁とSSPの取合部は、意匠的にSSPウェブ板が鉄骨梁下に通ったかたちとするため、鉄骨梁設置後ではパネルの吊り込みが困難となる。そのため、取り合う鉄骨梁を溝形鋼の二丁合わせとし、あらかじめそれぞれのパネルに片側を取り付けて地組みしたパネルの吊り込みを行い、溝型鋼どうしを接合した。

















            パネル接合詳細                               パネル接合部



【データシート】
用途 : 事務所
所在地:山形県山形市
意匠設計 : 古谷誠章+NASCA
構造設計 : 木下洋介構造計画
施工 : 市村工務店
階数 : 地上2階
延床面積 : 491㎡
構造種別 : 鉄骨造一部木造
竣工 : 2019年6月
撮影 : 淺川敏(竣工写真)



受賞・雑誌掲載】
▪月刊建築技術 2019年9月号掲載 (PDF)
▪鉄構技術 2019年3月号 VOL.32 掲載 (PDF)
▪ウッドデザイン賞2021 → 受賞ページ



【フォトギャラリー】