ちぐさこども園
本建物は群馬県沼田市の高台に計画された認定こども園である。
幼稚園と学童保育を合わせた園庭園舎が一体となる計画が構想された。施主である園長先生からの「できるだけ開放的で、みんながいっしょになれる園をつくりたい」という要望に対し、平屋で中央にホールを持つ扇型の広場のような空間のなかで子どもたちが一緒に遊び、駆け回れる園舎が提案された。
【構造概要】
吊り屋根端部はホール中央側ではステージ脇で極力邪魔にならない2箇所より鉄骨V字柱と鉄骨梁を架けて鉛直荷重を支持し、ステージ中央のRC立上りからテンションロッドにより水平反力を負担した。扇形外周側は木造の柱梁で鉛直荷重を支持し、保育室間の位置に同様にテンションロッドを配置して水平反力を負担するように計画し、これに伴い、建築の平面計画も扇形へと幾何学的な整理を行った。
ここで、木梁による吊り屋根を採用する場合、下記2点の懸念があった。
①梁端部接合部のボルトのガタによる初期変形の増大
②クリープによる経年での変形増大
また、屋根の設計積雪深さも70cmと比較的大きく、吊り屋根のたわみに対しては慎重に設計する必要があった。これらの懸念に対し検討の結果、木造の吊り梁内部に鉄骨の平鋼を内蔵して一体化し、端部を高力ボルトで接合することでガタを抑制し、同時にクリープによる変形増大に対するフェイルセーフとした。また、梁上部扇形の受け梁、折れ曲がり位置のつなぎ梁も鉄骨梁とすることで、これらがガイドとなり木架構の建て方時の精度確保を容易となると考えた。
扇状に配置した木梁はベイマツ製材120mm×210mmとして3.4°ピッチに配置し、ホール内部の吊り屋根部分では3〜4本に一本の割合で平鋼を内蔵、外側の保育室では同じく3.4°ピッチのまま通常の曲げ梁として配置し、ホールと保育室を一体的な架構としている。