CLAAPIN SAGAE
CLAAPIN SAGAEは山形県寒河江市にある道の駅に隣接した敷地に建つ屋内型児童遊戯施設である。 厳しい冬場に子どもたちが心身ともにダイナミックに遊ぶことが出来て、この地域の風景に馴染むランドマークとなるような施設を計画した。
同建物は地域の特産品であるさくらんぼの花びらをモチーフとした有機的に波打つ屋根が特徴であり、現代の高度な3次元技術だからこそ可能となる鉄骨造と、木造の複合シェルによる大空間を持つ建物である。

【構造概要】
意匠設計者から提示された凹凸のある優美な屋根形状に対し、基本設計段階から基壇をRC造、曲面屋根はシェル構造とする方針となった。 中央のみで支持された大空間を架構するため、放射方向の屋根の主鉄骨梁と円周方向梁を鉄骨梁とし、屋根のシェル効果を利用するため、鉄骨梁上に配置した木造母屋に構造用合板を貼って一体化した。最大13.3 mにも及ぶ円周方向架構と、5 mに迫る庇の片持ち梁は、有効に配置した鉄骨3次元アーチと曲面のシェル効果によってどちらも小断面の軸材で構成することができている。中央の架構は木造の曲面的なタワーとし、これにかかる傘型の屋根によって周辺の大屋根を吊り上げる構成としている。

CLAAPIN SAGAEの架構構成

屋根面の構成
複雑なボリュームを持つこの建物を施工するために必要な精密なジオメトリーの検討は8枚ずつからなる凹凸屋根の単位凸面、凹面の形状定義から始まった。
平面的に外側に広がる凹凸面を円錐面で定義した上で、意匠的に必要となる起伏、冬季に堆雪できる屋根勾配、製作可能な部材曲率の兼ね合いと、凹凸境界部や中央部での周辺部材との取り合いを検討した結果、斜円錐面を基本としながら、凸面の端部1/5スパンずつは雪が滑雪しない3.5寸勾配の直線を持つ変形斜円錐面として定義した。

凹凸面のジオメトリー
中央架構は大屋根を建物中央で支持するタワー状の架構で、上部には展望台がある。
中央架構そのものが巨大な遊具となるよう周囲にはネット遊具が纏わりついており、展望台から下部ネットへ連続した空中スペースを作ると同時に、展望台からの眺望を確保するために大屋根と中央架構は不連続となる。
この状態で中央架構が大屋根を支持するために、タワー上部の傘型屋根を四周に跳ね出し、吊り材によって大屋根を吊りあげている。また、傘型屋根は外周を3寸勾配とすることで、片持ち梁の応力は軸力主体とし、傘型屋根の外周梁をコンプレッションリングとして効かせている。

中央架構の構成

周辺の断面構成
建設地は多雪地域でありながら、複雑な形状のために積雪状況の予測や屋根面に作用する風圧の把握が困難であった。
そこで、流体解析を専門とし雪氷のシミュレーションにも詳しい新潟工科大学、風・流体工学研究センターの富永禎秀教授にご協力いただき、CFD解析によってシミュレーションを行った。これによって各種条件下での屋根面の風圧係数や積雪深の傾向を把握し、設計荷重を上回る可能性のある部位については安全を見込んで部材断面を決定する配慮を行った。

屋根積雪深のシミュレーション例
同建物は複雑な屋根形状を線材により構成するため、部材配置のパターンによって施工性は大きく左右される。
デジタルエンジニアリングを得意とする構造設計者であるDIX・田村尚土氏に設計時からご協力いただいた結果、当初は放射状配置を検討していた母屋を並行配置とすることになり、上部に貼る構造用合板の歩留まりが向上し、施工性と効率性を図ることができた。
さらに、庇先端の鉄骨パイプ梁は複雑な3次元曲面に対する平面上の切断線のためにそのままでは製作が困難であったが、近似する3円弧からなる近似線をプログラムによって導出し、部材形状へと反映することで実現した。