道の駅 若狭美浜はまびより

道の駅 若狭美浜はまびよりはPFIにより選定された事業者が、町や設計者と共に地域に資する観光拠点を目指し計画された建物である。
道の駅内の用途は地域産品の直売所やカフェ、レストラン、子育て交流施設などで、近隣の果樹園などとも一体的な利用を通して、観光拠点としてだけでなく日常的な地域住民の利用も想定した施設となっている。



【構造計画】
地域性を取り入れ、域内経済に貢献するものとなることや地域の市場のようなヒューマンスケールの親しみやすい空間とすることを念頭に地域材を使用した木造で検討を始めた。しかし、地域内の施工体制を考慮すると鉄骨造の方が比較的無理がないと分かったため、最終的には鉄骨造を採用しながら、人・家具・什器と親和性の高い空間とするため、木質化と合わせて鉄骨の柱梁は木造のスケール感に近いものを目指すこととなった。複数の架構形式の比較検討を経て、通常の鉄骨ライクなモーメントフレームを避け、木造に近い4mスパンを基調とし、筋かい・方杖のような斜材を有効に活用することで、断面をダウンサイズした木造ライクな鉄骨造とする構造計画とした。

全体架構


本建物では平面計画に合わせて二種の斜材を使用している。ひとつは南北方向の諸室界壁や外壁ラインに配置したブレースであり、界壁内等目立たない場所では溝形鋼二丁合わせ、見える位置では丸鋼ブレース等の断面に、もうひとつは界壁の少ない東西方向に配置した方杖である。
これらの斜材により、南北方向は柱スパンを4mとし水平力をブレースで負担して柱梁の負担を軽減、方杖ラーメン構造とした東西方向は柱スパンを倍の8mとする代わりに方杖により地震時の柱・梁の曲げ変形区間を短くし、長・短期の床、積雪荷重も方杖が有効に負担している。
これらの方針により、2階建同規模の木造程度の断面外形サイズとしている。

X-Y方向の耐震架構システム


柱梁の部材断面をダウンサイズするほか、地域産杉を用いた木質化、それらと親和性の高い空間とするため本建物では下記のような操作を行った。
①外周の軒裏を地域産材の杉羽目板貼りとして視界に入る木質感を高める。
1階の地域産品の直売所、子育て交流施設では鉄骨方杖レベルに木梁による欄間フレームを配置し、インテリアに統一感を与えながら照明や什器の拠りどこ ろとなるようにする。
屋外の身障者用駐車場等は本体と同様に鉄骨フレームとしながら、屋根は木垂木を用いた架構とする。

①②は非構造要素の操作であるが、これに合わせて鉄骨の方杖レベルを軒レベル、欄間レベルと合わせて連続的な見え方となるよう構造の調整を行っている。
以上より、斜材を有効に利用した架構形式による主構造部材のサイズ感の調整、家具・什器の拠りどころとなる木質の構造二次部材の配置、仕上げといった構造部材~仕上げの各レベルで木造のようにヒューマンスケールで親和性の高い空間となるよう配慮した。



【データシート】
用途:道の駅
所在地:福井県三方郡美浜町
意匠設計:三橋・山口設計共同企業体
構造設計:木下洋介構造計画
施工:技建工業
階数:地上2階
延床面積: 1,841m2
構造種別:鉄骨造
竣工:2023年6月
撮影:楠瀬友将 (竣工写真)



【受賞・雑誌掲載】
▪近代建築 2023年8月号 (WEB)
▪鉄鋼技術 2023年10月号 VOL.36 NO.425 (PDF)



【フォトギャラリー】