みしま未来研究所
本建物は静岡県三島市の中心市街地に位置する鉄骨造の旧幼稚園舎(1975年築)を改築した建物である。
町の郊外化等に伴う園児の減少により2010年に閉園となった園舎を地元のNPO法人が「地域の未来をつくる人材を育成する」ことを目的として市に活用を提案し、プロポーザルに採択された。
町の郊外化等に伴う園児の減少により2010年に閉園となった園舎を地元のNPO法人が「地域の未来をつくる人材を育成する」ことを目的として市に活用を提案し、プロポーザルに採択された。
【構造概要】
改修のコンセプトは思い出のつまる築40年以上の園舎の雰囲気を新たな使い方とのバランスをとりながら「残す」ことであった。そこで構造は室内に目立つ耐震補強要素を少なくしながら、全体のコストも抑えられる方法を模索した。ここで、建物から旧園庭周囲に設けられた庇は構造上も問題を抱えていたが、改修後もまちの縁側空間として新たにやり替える予定であったため、この架構自体を耐震補強として利用することを考えた。
既存の構造は軽量鉄骨造であったため、補強の構造体もなるべく繊細な架構としたい。また、現しのブレースなど旧園舎にとって異質な外観をもつ補強となることを避けるため、下図のように中間に梁を多段に設けた梯子状のラーメンフレームを組みこんだ補強架構とした。梯子状とすることにより、個材の断面を小さくしながら必要な剛性と耐力を確保している。この庇補強鉄骨架構で必要な耐震性能のほとんどを確保したうえで、偏心を抑えるための丸鋼ブレース補強を園庭と反対側の室内に配置している。また、梯子状フレームは各部屋入口脇に配置し、梯子梁の高さを部屋の案内板の裏に隠れる高さに調整したことでさらに旧園舎の外観に馴染むようにしている。
本補強はやり替えとなる庇部分が一体増築の扱いとなるため、既存部も含めて現行法に基づいた構造設計を行い耐震性を確保すると共に、耐力が不足していた既存柱脚などの補強も行い、必要な性能を確保した。
梯子状ラーメンフレームによる補強詳細 補強架構配置(赤の部材が補強架構)
【データシート】
用途 : 事務所、集会場、飲食店、物品販売店
所在地:静岡県三島市
意匠設計 : 成瀬・猪熊建築設計事務所
構造設計 : 木下洋介構造計画
施工 : 加和太建設
階数 : 地上1階
延床面積 : 349㎡
構造種別 : 鉄骨造(耐震改修)
竣工 : 2019年1月
撮影:四川公朗
【受賞・雑誌掲載】
▪鉄構技術 2019年9月号 VOL.32 NO.376掲載( PDF )
【フォトギャラリー】