オガールベース

本建築物は民間事業者が行政と連携して地方の公有地を活用する先進的な公民連携事業(PPP事業)であり、バレーボール専用体育館とホテル、店舗(テナント)を整備して合宿・研修ビジネスを展開し、町の滞在交流人口の拡大を図るユニークなまちづくり事業の中心施設である。

オガール広場とオガールベース


【構造概要】
構造計画の課題として、以下の5点が挙げられた。
・限られた予算を重視して低コストであること
・地元施工業者での施工を前提として施工が容易であること
・木造については中小断面材による効率的な架構とし、在来木造の延長上で施工可能であること
・地域産材の活用の観点から構造材料は紫波町産材、岩手県産材を使用すること
・将来の改修を見据えて、耐力要素は外周と階段室以外はほぼ取り払えるようすること

上記の課題をふまえて意匠設計と打ち合わせを重ね、ホテル・商業棟では木質ラーメン構造や高耐力の筋交いを用いた架構なども検討された。しかし、木質ラーメンは接合部の仕様や金物等が在来木造と比較して難易度が高く、筋交いは開口の多い2階の客室との相性が悪いため、議論を重ねた末に純木造を基本とした架構の中に部分的にRCの柱を混ぜるという「木+RC櫛型耐震壁」を考案した。
櫛形耐震壁の壁倍率は1階で約35倍相当、2階で約15倍相当の耐力を確保できる仕様とし、耐震壁はほぼ建物外周と階段室周囲のみとすることができた。
















 

 

 木+RC櫛形耐震壁                              イースト棟の櫛形耐震壁の配置        



体育館棟では、バレーボールの壁打ちのために1階床から高さ2mまではRC壁として、その上に木造屋根が乗っている。切妻断面に中間で一度折り曲げた方杖と頂部のつなぎ材でアーチ効果を利用した効率的な架構となっており、一般的な木造架構と比較してかなり少ない材料で24.6mのスパンをとばすことができている。また、架構の建て方は長手の壁際に足場を設けるのみで建て方が可能なように施工者と調整し設計を行った。

体育館の架構計画



【データシート 】
用途 : ホテル、商業施設、体育館
所在地:岩手県紫波郡
意匠設計 : らいおん建築事務所+木村設計AT
構造設計 : 木下洋介構造計画
施工 : 橘建設
階数 : 地上2階
延床面積 : 4,267㎡
構造種別 : 木造一部鉄筋コンクリート造
竣工 : 2014年6月
撮影 : 吉田誠(竣工写真)



【受賞・雑誌掲載】
▪日経アーキテクチュア 2014年9月25日号(WEB)
▪新建築 2017年5月号(WEB)
▪建築画報 No.374 近未来の構造設計掲載(PDF)
▪第27回JSCA賞 新人賞→受賞ページ







【フォトギャラリー】